暮らしの中の「考え続けること」を、少しずつ減らしています。
防災備蓄の期限、家事の順番、家の設備、服を選ぶ基準。
一度決めたり、仕組みにしたりすることで、毎回頭の中に置いておかなくても回るものが増えてきました。
それでも、お金のことだけは少し違いました。
- 家のローンをどうするか。
- 老後はいくら必要なのか。
- 夫は何歳まで働くのか。
- 投資はいつまで続け、いつから使うのか。
- 親に介護が必要になったらどうするのか。
その都度考えてはいたものの、全部をひとつにつなげたことはありませんでした。
だから一度、AIにファイナンシャルプランナーになってもらい、わが家のライフプランを作ってみることにしました。
このときはまだ、「いくらあれば安心なのか」を知りたかったのだと思います。
でも、実際にやってみて分かったのは、少し違うことでした。
01|最初は、「聞き上手なFP」をお願いした
今回、相談相手に使ったのはClaudeです。2026年10月、過去のやり取りを前提にしない新しいチャットで、2つのプロンプトをそれぞれ試しました。
この記事は、そのときのやり取りをもとにした私自身の体験です。AI全般で同じ結果になることを示すものではありません。
最初に使ったプロンプトはこちらです。
あなたは私の優秀で、とても聞き上手なファイナンシャルプランナーです。
40代からの暮らしに「静かな余白」を作るために、お金のモヤモヤ(未決定)をなくすライフプランを一緒に作りたいです。
一度にたくさん質問されると疲れてしまうので、以下のルールを守ってください。
- 専門用語は使わず、分かりやすく優しい言葉で話してください。
- 私の状況や価値観を整理するために、質問は必ず【1回につき1つだけ】にしてください。
- 私がそれに答えたら、次の質問をしてください。
- まずは、挨拶と、最初の1問目から始めてください。
AIは、本当に優しかったです。
- 「よく考えていますね」
- 「不安にならなくて大丈夫です」
- 「ゆっくり進めましょう」
- 「分からなければ、今は分からないで大丈夫です」
そんな言葉を何度もかけてくれました。
質問にもひとつずつ答えました。
聞かれたことだけではありません。
夫が健康なら65歳まで働く予定であること。必要なら私も働けること。住み替えが難しければ今の家に住み続けてもいいこと。
親の介護はできるだけ本人たちの年金や資産の範囲で考えたいこと。
老後も年に一度は旅行をしたいこと。食費や美容院など、健康や暮らしの楽しみに関わる部分は削りすぎたくないこと。
かなり話したつもりでした。
02|優しかった。でも、収入を聞かれないまま終わりそうになった
ところが、途中から違和感が出てきました。
ライフプランを作っているのに、世帯全体の収入状況をまだ聞かれていなかったからです。
私が働いているのかどうかも、聞かれませんでした。
それでも話は少しずつ「まとめ」に向かっていきました。
必要だと思った年収や、休職時の試算に関わる情報は、こちらから補いました。
夫の健康状態についても話していたので、私は「もし働けなくなったらどうなるのか」まで考えたかったのです。
出来上がった資料は、決して悪いものではありませんでした。
現在のお金を整理し、老後に足りなくなる金額を試算し、投資を続けた場合の見通しも出してくれました。
見た目もきれいにまとまっています。
ただ、私の中には、
「本当に、もう設計に必要な情報は揃っているのだろうか」
という疑問が残りました。
1問ずつ聞くことが悪かったのか。
「優しく」とお願いしたことが影響したのか。
それとも、別の指示との組み合わせだったのか。
その理由は私には分かりません。
ただ、「話を聞いてもらうこと」と「必要な情報を漏れなく集めて設計すること」は、同じではないのかもしれないと思いました。
03|2回目は、「必要なことを全部聞いて」と頼んだ
そこで、最初からやり直しました。
2回目のプロンプトです。
あなたは私の優秀なファイナンシャルプランナーです。
40代からの暮らしに余白を作るために、今どうするのが最適かと、今後についてのライフプランを作りたいです。
以下のルールです。
- 専門用語は使ってもらって大丈夫です。
- 今の私の状況や価値観を整理するために、必要な項目を全て最初に聞いてください。
- 次に今後私がどうしたいのかなどを聞いてください。
- 余白とは、不安にならずに過ごせる余裕のことです。
今度は、「1問ずつ」ではなく、必要な項目を最初にすべて確認してもらうことにしました。
すると、出てきた質問も、その後の資料も大きく変わりました。
家族、収入、支出、資産、住宅ローン、年金、夫の健康、働き方、住み替え、老後の暮らし、親の介護。
さらに、
- 「夫が働けなくなった場合」
- 「今すぐやること」
- 「親の介護や実家への備え」
- 「今後のライフプラン年表」
- 「年に一度見直す項目」
- 「まだ確認できていないこと」
まで整理されました。
1回目と2回目では、資料のページ数が違うというより、扱われている論点の範囲そのものが違いました。
質問の仕方が変わったことで、私自身も答えやすくなった部分はあったと思います。
ただ、1回目でも私は聞かれたこと以上にかなり話しています。
だから今回の差を、単純に「私が最初に情報を出さなかったから」と考えるのも違うと思っています。
04|それでも、完成した資料には前提のずれがあった
2回目の資料を見たときは、かなり驚きました。
数字が入り、表があり、年表まである。
「ここまで作れるのか」と思いました。
でも、ひとつずつ確認すると、いくつか気になるところが出てきました。
たとえば、
- 誰の生活費として計算しているのか。
- 給与をどのように受け取っているのか。
- 夫が仕事を休んだとき、実際にどんな負担が残るのか。
そうした前提が、私が考えていたものと違う部分がありました。
単純な計算ミスというより、計算する前の条件が違っていたのです。
数字だけを見れば、それらしく見えます。
表にもなっています。
「あなたの安心ラインはここです」と数字まで示されます。
だからこそ、少し怖いと思いました。
情報が足りなかったり、前提が違ったりしても、AIは完成したように見えるものを作れてしまいます。
05|「1問ずつ」と「必要な確認」は、別の話だった
聞き方の好みは、人によって違います。
1問ずつ考えながら答えたい人もいれば、必要なことを最初にまとめて聞かれた方が整理しやすい人もいます。
ここは好みだと思います。
私の場合は、「聞き上手でいてほしい」よりも、「必要な論点を漏らさず確認してほしい」と伝えた方が、欲しいものに近づきました。
ただ、1回目に足りなかったものを、すべて「プロンプトの書き方が悪かった」で終わらせるのも違うと思っています。
- 誰の生活費なのか。
- 世帯には、どんな収入があるのか。
- 働けなくなった場合に何が変わるのか。
これは、1問ずつ聞く場合でも、まとめて聞く場合でも、ライフプランを作るなら必要になる情報です。
プロンプトを工夫することは大切です。
でも、プロンプトだけで全部が解決するわけではありませんでした。
06|気づけたのは、自分にも少し知識があったから
今回、一番大きかったのはここでした。
私はファイナンシャルプランナーではありません。
それでも、家計や年金、社会保険、投資について、自分の暮らしに必要な範囲ではこれまで少しずつ調べてきました。
だから、
- 「この計算の前提は違うのでは」
- 「ここは確認した方がいいのでは」
と途中で止まることができました。
もし何も知らなかったら。
数字も表も年表もきれいに整った資料を見て、「これで大丈夫なのだ」と受け取っていたかもしれません。
AIを使えば、知識がいらなくなるわけではありませんでした。
むしろ私は今回、
知識は、自分ですべて計算するためだけではなく、AIの答えを確認するための安全装置にもなる
のだと思いました。
AIには、情報整理や計算、比較、シミュレーションを手伝ってもらえます。
でも、その前提が自分の暮らしと合っているのか。
制度の扱いが今も正しいのか。
大事なところは、公的な情報や勤務先、必要に応じて専門家に確認する。
そのくらいの距離感が、私にはちょうどよさそうです。
07|そして、「いくら貯めれば安心か」ではなかった
ライフプランを作りながら、もう一つ気づいたことがあります。
私は以前から、
「いくら貯めても、まだ足りない気がする」
と思うことがありました。
でも今回、ひとつずつ言葉にしてみると、その不安の中にはいろいろなものが混ざっていました。
- 住宅ローンをどうするか。
- 夫は何歳まで働くのか。
- 健康状態が変わったらどうするか。
- 子どもが独立した後、今の家に住み続けるのか。
- 親に介護が必要になったらどうするのか。
- 投資をいつまで続けるのか。
- 老後も旅行や外食を楽しんでいいのか。
お金が足りないことだけが不安だったのではありませんでした。
決めていないことを、ずっと頭の中に置いていた。
そのこと自体が、負担になっていたのだと思います。
未来なので、全部を今決めることはできません。
夫の健康も、親の介護も、家の売却価格も、投資の値動きも分かりません。
でも、
- 「今決めておくこと」
- 「そのときになったら決めること」
- 「年に一度だけ確認すること」
に分けることはできます。
そうすると、不思議なくらい頭の中からお金のモヤモヤが減りました。
いくら貯めても足りない気がしていたのは、金額だけの問題ではなかったのだと思います。
まだ決めていないことを、ずっと頭の中に置いていた。
そのことも、不安を大きくしていたのかもしれません。
お金の余白は、残高だけで作るものではない。
考え続けなくていいことを増やすことでも、少しずつ作れるのだと思います。
